帰宅すると楽になったのか少し眠っていたが、午後1時過ぎ、つらそうに鳴き声をあげながらベッドから降り、暗い所に身を隠そうとする。身体が冷えてしまうので、毛布にくるんでソファに横たえるが、また暗がりに隠れようとする。ファンの行きたい所へ行かせ、隣に腰かけてファンに声をかけるが、ファンはもう応えない。呼吸が荒く乱れるようになり、いつもと違う鳴き方をして身体の麻痺が始まった。膝の上に抱えるともうファンの意識はなかった。口を大きく開けて深く息を吸うが、その呼吸はファンの意思とは関係のない所で、身体が酸素を欲しがっているようだった。
私は以前13歳の犬をジステンパーで失くしたことがある。お別れの直前、私が抱きしめて号泣すると、既に神経麻痺が始まって朦朧としていたその子が、「泣かないで」というように重い頭を起こして顔を舐めようとした。自分もつらいだろうに、慰めてくれようとしていた。だから、今回はファンに静かに逝ってもらえるよう、私も静かに見送ろうと決めていた。「もう頑張らなくていいよ。怖くなんかないよ。お母さんがそばにいるから安心して行きなさい」と耳元で言うと、呼吸の間隔がどんどん長くなり、5回目で止まり、最後に背中をぐっとそらして足の力が抜けた。
小さい頃、学校で担任のシスターが涙を流すのを見て、神父様に「大人が泣いていいの?」と尋ねたことがある。神父様は「大切な人を想って流す涙は、天国のドアを開けるんだよ」と言った。だから、私も今日はファンのために泣きたいだけ泣こうと思う。
明日、ファンはお骨になる。ファンファン、享年推定3歳、2.4キロ。
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